- おす
- I
おす(動サ特活)〔近世江戸の遊里語。 現代では京都地方で用いられる〕(1)「ある」「いる」の丁寧語。 ございます。 あります。 おります。
「おや, ぬしやあ白いほくろが~・すよ/洒落本・自惚鏡」
(2)(補助動詞)形容詞の連用形, 助動詞「だ」の連用形「で」に付いて丁寧の意を表す。 …(で)ございます。 …(で)あります。「徳さんか, だうりできいたやうな声で~・した/洒落本・志羅川夜船」
〔(1)連用形「おし」, 終止形「おす」の用例がみられる。 (2)はじめは吉原の妓楼松葉屋の用語として用いられたものという〕IIおす(感)道などで出会った時の挨拶(アイサツ)の語。 男子学生など若い男性が, 仲間内で用いる。 おっす。IIIおす【押す・圧す】(1)物に手・指先などを当てがって, 前方へ力を加える。 《押》⇔ 引く「~・しても引いてもあかない」「ボタンを~・すとブザーが鳴ります」(2)車両などに後ろから力を加えて前進させる。 《押》「乳母車を~・す」「橇(ソリ)を~・す」(3)上から力を加える。 (ア)重みを加える。「上から~・してつぶす」(イ)(「捺す」とも書く)印や型を上から当てて写す。 「印鑑を~・して下さい」「記念帳にスタンプを~・す」「手形を~・す」(ウ)箔(ハク)を貼り付ける。 《押》「金箔を~・す」
(4)優位に立って相手を圧倒する。 《押・圧》「気迫に~・される」「終始~・し気味に試合を進める」「その場の雰囲気に~・されて何も言えない」(5)強引に自分の意志を通そうとする。 《押》(ア)相手に対して働きかける。「理詰めで~・して来られてはかなわない」「この条件でもう一押し~・してみよう」(イ)方針を変えずに貫く。 やり方などを変えずに進める。 「医学部受験一本槍で~・す」
(6)障害や困難があるのに, 無理をする。 強いてする。 《押》「反対を~・して…する」「病気を~・して会議に出席する」→ 押して(7)(「念を押す」などの形で)確かめる。 《押》「約束を忘れないように念を~・す」(8)(放送などで)時間がおしつまる。(9)軍勢などを進める。「東海東山両道を~・して責め上る/太平記 13」
(10)光などを, 上から一面に及ぼす。「春日山~・して照らせるこの月は/万葉 1074」
‖可能‖ おせる︱慣用︱ 駄目を~・横車を~・横に車を~/烙印(ラクイン)を押される押しも押されもせぬ争う余地のない。 ゆるぎない。 れっきとした。「~大実業家」
押すな押すな人が大勢おしかけて, 「押すな」と叫びたくなるほど混雑するさまをいう。「~の盛況」
押せ押せになる⇒ 押せ押せIVおす【推す】〔「おす(押・圧)」と同源〕(1)適当な人・物を推薦する。「委員長に~・す」「受賞候補としてこの作品を~・す」
(2)ある事から他の事を推測する。「これまでの発言から~・して, この件には反対らしい」「これまでに得られた情報から~・すと, 彼の当選はほぼ確実だ」
‖可能‖ おせる推して知るべしある事実を根拠にして考えれば簡単にわかる。 自明のことである。Vおす【雄・牡】(1)動物で, 精巣を有し, 精子を作る個体。 雌雄異体の生物で, 小配偶子を作る個体。 符号に♂を使う。⇔ 雌(2)植物で, 雄花のみをつける株。VIおす【食す】(1)「飲む」「食う」の尊敬語。「醸(カ)みし大御酒うまらに聞しもち~・せ/古事記(中)」
(2)「着る」の尊敬語。「臣の子は栲の袴を七重~・し/日本書紀(雄略)」
(3)「治める」の尊敬語。「天皇(スメロキ)の~・す国なれば/万葉 4006」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.